ink gallery

248-0031
鎌倉市鎌倉山1-19-12
MAP
展示期間中だけオープンします。

駐車場がありませんのでお車でのご来場はご遠慮ください。

鎌倉駅から
鎌4 鎌倉山行
鎌5 諏訪ヶ谷行
鎌6 江ノ島行
若松下車 徒歩5分

北鎌倉駅から
タクシーで約15分

東風

2024. 3/9 sat. - 3/17 sun.
11 a.m. - 6 p.m.

春間近、この三年の事を経て、
冬の雪が溶け地に染み込むようにゆったりとしながらも
連綿と韓国の友人たちとの文化交流は続いています。
三年前の鎌倉山での展示「春光」の後、
今春韓国から「東風:春の風」が吹きます。

しばらく韓国に向かう事はできませんでしたが、
事が明け訪韓できるようになった暁には、
この季節にと強く願った春に再訪できたのは必然のような気がします。
ソウルの市場は、はじめての印象と同じく春の息吹溢れるように
山菜達が韓国式の美意識の基羅列されていましたし、
相も変わらずスープの美味しさに身をよじり、
手をかけられた野のものの惣菜達はごはん泥棒で、
発酵料理の多彩さに心身共に満ちました。
ソウルの街中は桜の花弁が舞い、山上へ向かう道すがらには
春の花々達が咲き誇り、登り終えたところに見えた大きな白木蓮が
美しく風に揺れていたのが忘れられません。
そして、主題のひとつであった朝鮮王朝御用達の白土の産地である
楊口に建つ、イ・インファさん、キム・ドクホさんのアトリエに
訪問する約束をやっと果たせました。
大きな窓から入る光を集めて透過するイ・インファさんの白磁の作品、
キム・ドクホさんの青い作品は、その透過された白い光を吸収し
さらに青の鮮やかさが増しているようでした。

友人たちの作品は、古い器が多いわが家の卓上で
静かに寄り添うように交わりながら連日のように並びます。
日々の食事には、日常の美しさを尊ぶ気質に習う
キム・サンインさんの白磁を。

茶と菓子の時間には、透過し発光するような白に、
線が緊張感ありつつも手に溶け込むような
イ・インファさん、キム・ドクホさんの白磁を。

パク・ミギョンさんのモダンでエターナルなデザインの鍛金の器に
漆を焼き付けた作品は、卓上で白磁たちとの共鳴を誘います。

新しい出会いもありました。
パク・ミギョンさんのパートナーで鍛金作家のミン・ドクヨンさんの
アンティークのスッカラに漆をかけた作品は
真鍮が口に入る際の違和感を無くしてくれる。
こういう優美な解決策があったのかと笑みがこぼれました。

現代美術館で出会った繊維作家イム・ソユンさんによる布作品が放つ
静謐で詩的な佇まいに目が釘付けになりました。
茶道具である作品は漢詩「東多松」を具現化したもの。
ソユンさんによる作品紹介の文を拝読すると情景が浮かび上がり、
そこから派生する目に映る美というものに再度重要さを感じた作品です。

韓国から日本に流れる食にまつわる文化は市井の私たちに身近であり、
この交流は循環しつつ互いに敬愛し繋がっていけたらと思います。

最後に、この縁を繋いで下さり文化交流の循環の根元となる
韓国宮廷料理研究家の崔智恩さんに感謝申し上げます。
前回は叶わなかったのですが、
今回は崔さんにお越し頂ける事にも併せて感謝申し上げます。

是非とも作品を手に取り、眺め、
日常の卓上や茶の時間にどのように交わるのか想像してみて下さい。
東風吹く、
鎌倉山の美しいインクギャラリーにて心よりお待ちしております。


浅春 内田真美

平澤まりこ展

2023. 11/3 fri. – 11/12 sun.
11 a.m. – 6 p.m.

毎朝の散歩をしているとき、ふと
新しい季節がはじまった、という気がする日がある。
はたまた旅をしているとき
この土地とはなんだか相性が良い気がする、

と思うことがある。
日常のなかで〝そんな気がする〞ということは案外あって
私はけっこうそれを当てにして生きている。

根拠もなければ、目に見えるものでもないから
気のせいと言われればそれまでだけれど、
この内なるレーダーの精度はなかなかだ。

世の人々の暮らしが
がらりと変わったあの頃から
私は作り出すものが変わった。

どうか心平らかに日々を送れますよう、と
小さな祈りのような気持ちで
紙に、土に、向かうようになった。
それがいま必要な気がしたから。

生み出したふくよかな馬や女性たちは
大らかにそこに在り、
そっとこの世界に寄り添ってくれる気がするのだ。

今回は、近年制作している描版画に加え、
陶作家 安藤雅信さんのご協力のもと
陶製の立体作品に挑み、
大好物であるサヴールのバターケーキのための
大皿と小皿も作らせていただいた。

鎌倉山の心地よい秋風とともに
皆さまに愉しんでいただければ幸甚にございます。

平澤まりこ